一つの家に、いくつもの暮らし方を。

プロジェクトマネージャーの松本です。
第1話では、首里金城町で出会った築古のRC住宅を購入し、「首里の杜」として再生していくことをご紹介しました。
古いから壊して新しくするのではなく、長い時間を重ねてきた建物の魅力を残しながら、これからの暮らしに合う住まいへ再編集する。
では、どんな住まいをつくろうとしているのか。
私たちが考えたのは、住む人のライフスタイルに合わせて、一つの家をいくつもの方法で使える住まいです。

この建物は1階約98㎡、2階約84㎡。
それぞれにLDK、寝室、水まわりを設け、独立した生活ができるよう計画しています。
例えば、親世帯と子世帯が暮らす二世帯住宅として。
あるいは1階に自分たちが暮らし、2階を賃貸住宅として貸し出す。
住みながら家賃収入を得るという選択肢も考えられます。
京都や東京などに生活の本拠を持つ方なら、1階を沖縄でのセカンドハウスや仕事場として利用し、2階を賃貸する。
必要な時には2階も自分や家族、友人が使う。
「住む」「働く」「貸す」「時々使う」。
その時々の家族構成や仕事、人生の変化に合わせて使い方を変えられることも、「首里の杜」の大きな魅力だと考えています。

首里の暮らしをつくる Four Values

ただ、自由に使えるだけの住宅にはしたくありません。
この場所だからこそ大切にしたいものを、私たちはFour Values ― 4つのバリューとして考えました。
一つ目は、歴史的景観と眺望。
琉球王朝の歴史を今に伝える石畳や石垣、そして首里の丘から那覇市内を見渡す眺望です。
二つ目は、自然と共にあること。
首里城を囲む杜、大アカギ、湧水など、この地域には都市の中とは思えないほど豊かな自然と、どこかスピリチュアルな空気があります。
三つ目は、首里の生活文化。
食や伝統工芸、人を迎え、もてなす文化。
観光で訪れるだけでは分からない「暮らす沖縄」を、この家から感じてもらいたいと思っています。
そして四つ目が、ゆいまーる精神。
地域の人たちとのつながりを大切にし、お互いに緩やかに助け合う。
新しくこの場所に暮らす人にも、地域の一員として首里との関係を育ててほしいと考えています。

改修テーマ

1階は「庭と暮らす」
1階のテーマは、庭との一体感です。
白を基調とした空間に土間を設け、室内から庭へと暮らしが自然につながっていくようにします。
庭には、この土地にもともとある緑や石の表情を活かす。
朝、庭を眺めながらコーヒーを飲む。
休日には家族や友人と食事をする。
仕事場として使うなら、少し疲れた時に庭へ出て風を感じる。
沖縄の気候だからこそ、「家の中」だけで暮らしを完結させず、外までを生活空間として楽しめる家にしたいと思っています。

2階は「空と眺望を楽しむ」
2階の魅力は、何といっても首里の丘からの眺望です。
窓からは首里の緑や街並みが広がり、さらに屋上へ上がれば那覇市内を見渡すことができます。
1階が「庭と暮らす家」なら、2階は「空と暮らす家」。
それぞれ違う魅力を持たせることで、二世帯で暮らしても、片方を貸しても、それぞれが一つの住まいとして成立することを目指しています。

この家の完成形は、一つではない

「首里の杜」で私たちがつくりたいのは、単にきれいに改修された中古住宅ではありません。
歴史ある石畳、首里の杜と自然、生活文化、そして地域とのつながり。
そうした首里にしかない価値を受け継ぎながら、住む人が自分らしい使い方を選べる家です。
二世帯で暮らす。
住みながら貸す。
沖縄でのセカンドハウスにする。
仕事場と住まいを組み合わせる。
暮らし方が変われば、家の使い方も変わっていい。
歴史的記憶を大切に、自然への畏敬の念を持ち、地域と共にある新しい暮らしを育む。
それが、私たちが「首里の杜」でつくりたい、新しい沖縄の暮らしです。

WRITER松本

石畳の杜プロジェクトマネージャー。
不動産・事業づくりを仕事にしています。
旅先では「古き良きもの」を探して歩くのが好き。
歴史や暮らしの痕跡に触れるとワクワクします。
沖縄が特に好きで、街並みや文化、人の空気感に惹かれています。